『スカイ・クロラ』を読む。

小説(映画)のネタバレとなるような記事、内容は書いておりません。どうぞ、ご安心を。

空と地上のコントラストをバックに、
人の生と死に向き合い、迷い、想う。

現在、映画でも公開されている「スカイ・クロラ」を読んでみた。ちょうどオリンピックが始まる直前の暑い日だったけれど、読むうちにいつの間にか暑さを忘れて、その世界にすっかり入り込んでいました。

特に空を飛んでいる時の荘厳で静かな世界と、どこか色褪せた寂しさの漂う地上世界の描写のコントラストをバックに、生と死に直面しながら生きる主人公たちの心の変化と葛藤の描写が美しく織り込まれていて、読んでいるうちにしばらく忘れていた感情が思い起こされていくような、そんな不思議な魅力に溢れた一冊。

丁寧で緻密な描写。

描写はとても丁寧で優しく、登場人物の息づかいや、そこに登場するモノ全ての存在をリアルに感じることの出来る表現力は流石。特に空を飛行している時の描写の緻密さは特筆もの。主人公と一緒に空を飛んで、同じ光景を目にしているかのような錯覚をおぼえてしまいます。

リズム感のある美しい文章。

また、台詞だけでなく、全体の文章も詩のように美しいリズムで綴られているのがとても印象的ですね。内容も含めてその独特なリズムに、この手の小説が苦手な方にはやや読み難さを感じるかもしれません。

「答え」や明確な「何か」を求めるタイプの方には向かない作品ですが、間を読んだり、空気感を味わったり、主人公の気持ちの移ろいや迷いを一緒に共有することが好きな人にはオススメ出来る作品ではないかと思います。

映画と比べてみても面白い?

映画はまだ見ていないので、何とも言えないけれど、本を読んで自分の中である程度イメージが浮かんでいる人は、実際に押井守さんの描く世界と、どれくらいマッチしているか、あるいはギャップがあるかを楽しんでも面白いかもしれませんね〜。CMでちらっと見た限りでは、「色」に関してはマッチしている感じでした。笑

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