『Amandla』を聴く。

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マイルス・デイビスの作品は
絵画鑑賞に似ている?

マイルス・デイビスの作品はどれもクリエイティビティ(創造性)に溢れていて、いつ聴いても、何度聴いても、聴く度に新しい発見があるように思う。その証拠に多種多様な音楽を色々と聴く中で次第に聴かなくなってくるアルバムがあるのだが、彼のアルバムだけはどれも「飽き」が来ない。聴いていない時期が長くても、しばらくするとなぜか聴いていたりする。笑

多分、マイルスが作品を通じて音楽性を伝えたくて演奏していただけではなく、彼自身の「世界・思想的な部分」も伝えようとしていたからだと思う。だから、彼の作品を聴くと、ただ聴くのではなく、考えさせられることが多い。また、ジャズという性質上、聴く人の数だけ解釈の仕方があるわけで、そのあたりは、美術館で絵画を見て感じることが人それぞれ違うのと似ている部分がある。

Amandla」はマイルス・デイビスが逝去する2年前に発表された最後期のアルバム。ジャズの世界で様々な表現を試みて来た彼の最後期の作品は、一見、シンプルにミュートを使って演奏するのみ(病魔にやられていた彼としてはそれが精一杯だったんだと思う)だけど、サウンドそのものは衰えるどころか、ますます光を放つ感じで冴え渡っているように思う。特にソロの表現、音と音の「間」の使い方はやはり彼にしか出来ない素晴らしさがあり、変に力が入っていないため、リラックスしたミュートサウンドがとても柔らかく、優しさが感じられますね。(ラストの曲は彼のオープンサウンドも聴けます。)

もしも、彼が生きていたら、今のジャズシーンはどうなっていたのか。そんな空想をしながらこの作品を聴くと、また違った面白さがあるかもしれませんね。余談ですが、「Amandla」とは「我らに力を」という意味だそうです。あと、余談その2。マイルス・デイビスは音楽だけでなく、絵の才能もあり、自身のアルバムジャケットのデザインに採用されたこともある(『スター・ピープル』)。う〜ん、かっこいい!

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